DAOとは? Web3.0時代の組織運営の新しい仕組み

2022年から「Web3.0」「NFT」と共に大きく注目を集めている「DAO(Decentralized Autonomous Organization)」は分散型自律組織とも訳され、既存の組織体制とは異なる新しい組織の形として話題になっています。今回はDAO(分散型自律組織)の概要とその仕組み、国内外での活用事例を紹介します。

DAOとは?今までの組織と何が違うのか

DAOは日本語で分散型自律組織と呼ばれ、2022年から話題になっている新しい組織体系体制系体制の一つです。主な特徴として中央管理者が存在せず、国籍・性別に関係なく参加できる上、各参加者に公平な裁量権が与えられます。

DAOの詳細な仕組みについては後に紹介しますが、この組織運営は全てシステム内のスマートコントラクトによって記録され、インターネット上で完結できます。運営方針への意思決定も各参加者へ与えられたガバナンストークンを使用し投票して行うため、より民主的な運営体制を実現できるという点が注目を集めている最大の理由です。

また、DAOの基本概念はWeb3.0の価値観と同じで、ブロックチェーン技術を基盤とした非中央集権的なネットワークを介して、P2Pによる個人対個人の取引を活発にすること、情報の主権を個人の手に戻して民主的で分散管理された環境を実現するという概念から生まれた組織体制です。

Web3.0詳細はこちらのコラムから >>
https://ctia.ltd/column_20220617/

<特徴>

  • 中央管理者が存在しない
  • 各参加者に公平な裁量権が与えられる
  • 国籍・性別に関係なく参加可能

従来の企業や組織体制の一例として株式会社では、意思決定者である社長・CEOの企業方針や理念をもとに、株主から発行した株式と引き換えに資本金を受けとり、役員・従業員の雇用や事業の運用資金の用途などをトップダウンで決めていきます。基本的にこの意思決定は外部に非公開で行われるため、一部の従業員や運営者にも公開されないことも多く、情報の透明性はやや低いと言えます。

株式会社だけでなく、自治体などの首長(市長や都道府県知事)を筆頭とした行政組織や理事などを代表とする非営利組織NGOなども、形は違えど中央集権的な組織で運営されています。このように既存の組織体制体制と比較すると、DAOは対照的な特徴を持っていると言えます。

ガバナンストークンによる分散自律の仕組み

DAOの仕組みを紹介する上で重要な特徴は大きく分けて3つあります。

中央管理者がいない

先に紹介した通り、DAOの中では意思決定を行うリーダーのような中央管理者が存在しません。管理者がいない代わりに、DAOの参加者には資金投資やプロジェクト貢献度の引き換えに運営方針を決めるための投票権がガバナンストークンとして与えられます。

このガバナンストークンはブロックチェーン上に運営の履歴や貢献度、意思決定の結果を記録するものであり、情報はスマートコントラクトによって自動的に書き込まれます。ガバナンストークンの主な権限は、運営におけるマネジメントの役割やプロジェクトの基盤となるプログラム変更の権限などがあります。

合議制で民主的な組織運営

DAOでの意思決定は委員会のように各参加者の投票によって行われます。参加するプロジェクトの中に改善点があれば、トークンを持つ参加者が自由に意見提案をして投票を行い、優先度をつけて改善する合議制の組織です。

ブロックチェーン上に記録された運営方針に関わる情報も管理者の許可なく誰でも参照できるため、不正が起こる可能性が低いことや情報の透明性が高いことも特徴です。

合議制で民主的な組織運営

DAOの参加者に付与される報酬量は貢献度や運営方針によって差はありますが、その手段が現金ではなく特定のトークンでやり取りされます。
参加者にNFTを付与するDAOや、プロジェクトの長期的な運営を目指すためにガバナンストークン保有者へ取引手数料の一部を付与するなど、プロジェクトごとの方針によって設定された対価を受け取ります。

上記のDAOの特徴や今までにない組織体制の例えとして「DAOは事業かつ商品かつ共同体」と表現されます。ある共通の目的のために集まった参加者同士で、独自のコミュニティを形成し、提案する意見や方針が付加価値やブランド力を高めることができる点が、DAOは事業であり、商品そのものでもあり、共同体でもあると表現される理由です。

DAOのメリットとデメリット

DAOの特徴から得られるメリットは大きく3つです。

一つは中央管理者がおらず参加者の権限が平等なため、誰でも自由に運営方針への意見や提案がしやすい点です。権限の一極集中には経営陣の強引な運営改変や理不尽な業務改善などが起きる可能性があり、それが原因で組織、プロジェクトの評判にも影響します。
DAOでは国籍や性別を問わず公平に分散された権限の参加者が運営に対する意見や提案を議論できる自由度の高さがメリットの一つです。

次に意思決定の場がオープンなため、不正が起きづらく組織の透明性が高いことが挙げられます。運営に関わる情報や履歴はブロックチェーン上に記録され、管理者などの許可なく閲覧できます。仮に参加者による不正があったとしても、オープンな環境では原因を簡単に発見できますし、不正を起こすこと自体がコミュニティの信用や事業の価値を落とすことにつながるので、信用リスクを軽減することができます。

もう一点は、帰属意識が高まりやすいことです。DAOでは、参加者の能力やスキルに合う役職を与えることもでき、その役職の範囲での意思決定、投票が可能です。自身の意見が尊重され反映されることは、関わるメンバーのモチベーションになり、組織への帰属意識の向上や運営への達成感などにつながります。

<メリット>

  • 参加者同士の意見、提案がしやすい
  • 意思決定の場がオープンなため組織の透明性が高い
  • 帰属意識が高まりやすい

一方で良い点だけではなく、DAOの組織体制がかかえるリスクやデメリットも存在します。

まず、インターネット上ですべての取引や運営を行うDAOでは、ハッキングのリスクがあります。2016年に分散投資組織「The DAO*」が150億円の運営資金を集めたとして話題になりましたが、運営プラットフォームにバグが発生し、その脆弱性のすきを突いたハッキングによって52億円相当の資金が盗まれる事件が発生しました。
同事件では、DAO参加者の同意を得てブロックチェーンをハッキング前に戻すことで、資産を取り戻す対応を行いました。運営、取引、資金管理をデジタルで一貫していることはメリットでもありますが、ハッキングの危険性が伴うので参加、運営する際は注意が必要です。

*The DAO… イーサリアムのプラットフォームで立ち上げられた分散型投資組織のプロジェクト。投資先をファンドの参加者の投票で決め、利益分をガバナンストークンとして投資者へ分配する仕組みを備える。

2つ目に組織運営における意思決定が遅くなる可能性があります。
ピラミッド型のトップダウンによる組織では意思決定者が少ないのでそのスピードが速いです。その反面DAOでは、ガバナンストークンを保有した参加者の投票で決定するため、方針を決定するのに時間がかかります。先に紹介したハッキングへの問題解決においても、早急な対応が求められる事態で、投票を行い意思決定するのは時間がかかり対応が遅れる要因にもなりえます。

法整備がされていないこともリスクの一つです。DAOは新しい組織体制であり、Web3.0や暗号資産、ブロックチェーンなどと同じく、現状法整備が追いついていません。ハッキングや法的問題への対処も自己責任という国も多く、今後の法的な枠組みを整備するニュースなどは注目される点です。

<デメリット>

  • ハッキングのリスクが伴う
  • 組織運営における意思決定が遅くなる可能性がある
  • 法整備が追いついていない

事業創出、地域活性化の火付け役に DAOの活用事例

DAOが話題になるにつれ、DAOを活用した新規プロジェクトの立ち上げや地域活性化の事例が国内外に広がっています。その一部をご紹介します。

Ninja DAO

国内で人気の日本発NFTコレクション創作DAO「Ninja DAO」は、現在参加者数が約4万人規模になっています。メインキャラクターCrypto NinjaをNFTコレクションとして打ち出しており、参加者がそのNFT作品を利用して二次創作することも可能です。
DAO内ではクリエーターによる音楽制作、他企業とのゲーム制作などスピンオフ企画や新規プロジェクトなども盛んに行われています。創作自由度の高さや幅広い分野での活発なコミュニティが形成されています。

山古志住民会議

新潟県長岡市(旧山古志村)は人口減少対策にニシキゴイのNFTアートを電子住民票として世界で初めて販売し、そのNFTを購入し所有するデジタル住民をDAOのコミュニティとして迎え入れるという「山古志住民会議」の施策を行いました。その結果、現実の住民800人を上回る約1000人のデジタル住民が誕生し、近隣地域の活性化策をDAO内で議論しながら関係人口の増加と地域外交流が増えています。
日本で限界集落と言われる自治体や地方でもDAOを活用して自主財源確保と人的資源不足の解消に取り組む事業が増えており、地域活性化の火付け役として注目されています。

Constitution DAO

2021年11月、米オークションに出品された米国憲法の原本を落札するためのDAO「Constitution DAO」が立ち上がりました。DAO内では現物のコレクションを競り落とす目的で集まった参加者によるクラウドファンディングが行われ、わずか1週間で4700万ドル(当時約54億円)の資金を集めました。

結果的に憲法原本の適切管理に必要な資金が足りないという理由で落札は達成できなかったものの、DAOが発展するきっかけとなった事例の一つです。現在このDAOのコアメンバーによる活動は終了しており、集めた資金は全額返金されています。

DeStore

サンフランシスコの中心部に構えた開店前の雑貨店DeStoreでは、DAO運営型店舗として店舗独自発行のNFTを所有した者同士でお店の運営方針などを投票によって決定する仕組みを導入しています。DAOによる経営で集客やコミュニティ形成も一手に行いながら、顧客とのつながりを強固にすることが狙いで、顧客を店舗に呼び込む仕掛けを作り出しています。

日本をはじめ、世界各国でDAOを活用した事例が増えていますが、全ての組織運営、業務手続きをデジタルに置き換え、インターネット上で完結させることはまだ難しいのが現状です。ブロックチェーンの実装然り、どの業務をデジタルに置き換えるかを議論しているのが産業界の今であり、ご紹介した事例のように行政・自治体においてもより効果的な実装方法が模索中されています。

DAOを取り入れて解像度の高い事業にしていくには、まず既存組織とDAOのハイブリッド形式を取って各形式の優れた部分を活かすのが実装における第一歩です。

CTIAではDAOをはじめブロックチェーン、トークンの社会実装やWeb3.0時代に必要なデジタルリテラシーの向上、DXを推進しています。DAOを活用したビジネスにご関心のある方は、お問い合わせフォームからご相談ください。

Writer:T.OGASAHARA

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