Web3.0 まるわかり 2022年世界の暗号資産業界を8つのニュースで振り返る

2022年も残すところあとわずかとなりました。Web3.0元年と言われるほど、今年は日本をはじめ世界がWeb3.0業界に注目した1年となり、NFTやDeFi、DAOなど数多くの業界用語もネット上の検索トレンドにあがりました。そこで今回は、暗号資産業界でとりわけ注目を浴びた動向をおさらいするため、2022年に起こったWeb3.0や暗号資産のニュースの中で、マイルストーンとなり世界の情勢を時系列順に8つピックアップしてご紹介します。

1月 暗号資産時価、21年11月から1兆ドル以上減少

2021年11月にビットコインが当時55,000ドル(約730万円)の最高値を記録してから22年1月には36,000ドルまで価格が下落し、暗号資産全体においては時価総額で1兆ドル(約114兆円)以上が減少しました。米国金融当局による景気刺激策が解除される意向を受け世界のハイリスク資産が打撃を受ける中、暗号資産業界も過去最大級のボラティリティとなり、各種メディアでも大きく取り上げられました。

また、この頃から「Web3.0」というワードが少しずつトレンド入りするようになりました。

2月 暗号資産を用いた「ウクライナへの寄付」開始

ロシア軍によるウクライナ侵攻が始まったことを契機に、ウクライナ政府は2月末に公式ツイッターアカウントから財政支援の方法の一つとして暗号資産による寄付の呼びかけを開始しました。従来の常識では考えられなかった事例ではあったものの、ウクライナ副首相や外交官など政府関係者からも寄付先のウォレットアドレスがシェアされ、ビットコイン、イーサリアムをはじめ、いわゆるアルトコインやNFT(非代替性トークン)による多くの寄付が集まりました。

一国の有事に対し直接かつ迅速に支援を行う手段として暗号資産が有効活用されることは異例でしたが、仲介者を必要としない寄付を実現する糸口としても大きな注目を集めました。

4月 中央アフリカ、ビットコインを法定通貨に世界で2か国目

4月末、中央アフリカ共和国でビットコインを法定通貨として採用したと発表し、エルサルバドルに次いで2カ国目となるビットコイン法定通貨化の事例となりました。
同国は世界で最も貧しい国とも呼ばれており、約80年前にフランスから独立して以降、国内でクーデターが多発するなど不安定な国家情勢にあります。ビットコインの法定通貨化には賛否あるものの、不安定な国政状況から国民が銀行口座を持てないなど金融サービスにアクセスできない国ではファイナンシャルインクルージョン(金融包摂)の一助になるという意見もあり、主に中南米の国々で数多くの議論がされています。

5月 ドイツ財務省、暗号資産所得税ガイドラインを発表

ドイツ連邦財務省は今年5月法人、個人を含む国内の納税者に向けた暗号資産の取り扱いガイドラインを発行しました。同ガイドラインでは、「所得税法の関係で暗号資産(仮想通貨)を取得後1年経過後に売却した場合、利益が出ても非課税」という内容が含まれており、暗号資産の売買益の課税制度を大きく見直した形です。
その他にもステーキングやマイニング、エアドロップなど暗号資産業界における主要な仕組みに対しても言及しています。ドイツ政府関係者からは同ガイドラインは中間的なもので最終結論ではないとしたものの、今後税務当局と協議を重ね暗号資産やその他トークンに対する所得税の課題に取り組むとしています。

5月 韓国テラショックで7兆円が消滅

韓国発の暗号資産であるルナ(Luna)とテラが5月中旬から大幅に下落し、暗号資産市場を含め世界の金融業界にも動揺が広がりました。ルナの価格に至っては、24時間で97%も急落、ドルに連動するように設計されたステーブルコインのテラまで急落したため、韓国国内の多くの個人投資家が打撃を受けました。この騒動から暗号資産市場の取り付け騒ぎが起こり、ビットコインも27,000ドル近くまで下落、米国財務省からはステーブルコインの規制を促す発表がされました。

リーマンショックを彷彿とさせるテラショックの一件は韓国国内で「ブラックサースデー」と呼ばれ、業界内の混乱と海外金融機関の規制の声が入り混じる事件となりました。

10月 スイス・ルガーノ―市内でビットコイン料金支払いが可能に

スイス・ルガーノ市では10月初めからマクドナルド他十数箇所でビットコインと米ドル連動のステーブルコイン・テザー(Tether/USDT)、スイスフラン連動型ステーブルコインLVGAの3銘柄の暗号資産による決済が可能になりました。同市の市長は「事実上の法定通貨として合法化するもの」として、今後は税金の支払いや公共料金決済にも導入先を増やす予定です。
スイスは地政学的に北がドイツ語圏、西がフランス語圏、南がイタリア語圏(ルガーノ市は南側)の文化の影響がそれぞれ大きいこともあり、金融都市構想の実現にも各地域独自の政策で取り組んでいます。

また今年の3月にルガーノ市とテザー社がブロックチェーン導入のための欧州中核拠点を目標にMOUを締結して約半年で実現したという点でも暗号資産関連の官民連携事業としてはスピードの速い事例と言えます。

11月 アメリカFTX経営破綻

11月米国大手の暗号資産取引所FTXとその子会社アラメダ・リサーチによる財務破綻が発端になり暗号資産業界は大きな打撃を受けました。FTXの各グループ会社130社が米国で破産申請の手続きが行われた他、各拠点での資産差し押さえやFTXが提供していた取引所サービスは軒並み停止され、世界の多くの暗号資産保有者に被害が及びました。
特に11月時点での提出資料では上位50社の債権者に31億ドル(約4400億円)の債務があると判明し、被害の大きさが伺えます。また、FTXの危機的な財務状況が明るみになった影響で暗号資産の時価総額も約40兆円近く減少しました。

FTXショックと言えるこの事件から暗号資産やWeb3.0における規制強化の動きが各国で強まる要因になりました。

11月 日本ドコモ、Web3.0 に6000億円投資

NTTドコモは11月8日、Web3.0活用に向け、今後5〜6年で5,000〜6,000億円を投資すると発表しました。ブロックチェーン・ウォレットをはじめ、トークン発行やセキュリティなどの基盤技術を整備し、DAO(分散型自律組織)型アプローチによって多種多様な業界業種からの参加を募ることを明言しました。また2023年には新会社を設立し、日本発のグローバルデファクトを目指すと明かし、Web3.0の強みを生かした環境問題の解決や地方創生に取り組むことにも言及しています。
日本最大手企業が巨額投資するプロジェクトとして国内では大きく話題になりましたが、先に紹介したFTX破綻事件が直後に起こったこともあり Web3.0業界の荒波にどう立ち向かうのか今後も注目されるニュースです。

ネット上では2022年下半期から世界中でWeb3.0や暗号資産などのワードが検索上位になるなどして、注目されるようになりました。業界が揺らぐような事件もありましたが、一部の国では法定通貨や料金支払いなど生活の一端を担う活用例が上がり、ニューフロンティアとして大手企業が参入する事例も出ています。

 

2023年が暗号資産業界の飛躍の年になれるか今後も注視したいと思います。みなさん良いお年を。

 

Writer:T.OGASAHARA

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