テレワークに欠かせないデジタル業務のミライ
都内ワーカー49%、コロナショックによるテレワークの増加
全世界に広がった新型コロナウイルスによるパンデミックは、社会の構造やあり方を考え直す機会になっています。その一つが仕事や業務の変化です。現在、日本をはじめ世界の大手企業や中小企業までもが在宅勤務やリモートワークの推進に取り組んでいます。
アメリカ調査会社ガートナーが米国内の人事部門の管理職800人を対象に行った調査(3月17日発表)では、調査対象の企業や団体の88%が従業員に在宅勤務を奨励または義務付けています。
またパーソル総合研究所の調査によると、国内のテレワーク実施率は4月時点で全国27%、都内においては49%が行っているという結果が出ました。(4月10〜12日にインターネット上で実施。従業員数が10人以上の企業で働く、20〜59歳の男女2万5769人に意見調査)地域に差はあるものの都内の約半数のワーカーがテレワークを実施しているという結果は、大きな数字と言えます。
紙需要の変化、行政や民間が紙文化をぬぐえない理由
しかし、リモートでの仕事が増える一方でその足かせとなるのが紙による実務です。遠隔でオンライン作業をする際、実務の大半を占めるのはPC上での作業であり、資料を出力または送付するといった作業はどうしても、手間がかかってしまいます。
この兆候として製紙業の株価下落がヒントになりえます。国内大手製紙企業の株価指数は年初から3か月間で約30%下落しました。これは主力の印刷用紙などの需要減少を危惧した投資家の売りが増えた結果です。
現在の製紙業界の株価は元に戻りつつありますが、この製紙企業株価の下落はコロナショックによる一過性のものではなく、SNSやデジタル技術の進歩によって製紙業全体の需要構造が変化するという見方もできます。
また社内手続きであれば、社長やトップの一存でスピーディーに書類内容の変更が可能ですが、他社との契約や見積り確認、行税手続きには相手の同意が必要です。この同意のために、リモートワーク中であるにもかかわらずわざわざ会社に出向いて書類作成・ハンコでの捺印・発送をするワーカーもいます。
さらに書面や紙での契約締結が法令で決まっている場合もあり、この点が社会全体でペーパーレスを進める壁になっている理由の一つです。
こうした紙対応の取り組みを刷新するために、安倍首相は今年4月末「書面提出や押印といった習慣・法令を見直す」と言及しました。官民両方で紙文化にデジタル変革(DX)を起こせるかどうかが今後のカギです。
ブロックチェーン、証明書や印鑑に代わるデジタル技術
このペーパーレスの問題を解決できるDXソリューションの一つがブロックチェーンです。従来の契約書締結には紙やメールで連絡を取り、詳細の確認から同意までの流れを当事者間で何度も行いますが、ブロックチェーンを活用してその履歴を管理すれば、契約書や書類などのペーパーレス化につながり、業務効率を高める可能性があります。
また、ブロックチェーンの特性として当事者間で行う合意を自動化するスマートコントラクトを用いれば、従来の同意にかかっていた時間や手間を省略することさえでき、そのために必要なハンコを押す手間がなくなります。その潜在能力がブロックチェーンには秘められています。
この内容は決して絵空事ではなく、国内外で実証実験を行う企業や導入を検討する国家もあります。
CTIAはこのような紙による書類管理の段階から、当事者間のIDを通したデジタル認証へアップグレードするための取り組みをTaaSで実現したいと考えます。世界のあらゆる事例を踏まえながら、ブロックチェーンやDLT、その他先端技術を活用して解決するために日々活動しています。
現代はデジタルによって仕事のあり方が大きく変わる転換期です。在宅などのリモートワークが増えて、企業や社会のDXが浸透してペーパーレスを加速させるには、官民一体で足並みをそろえる必要があります。国内の紙対応がDXによって未来の世代から神対応だといわれる日が来ることを願ってやみません。
Writer: T. OGASAHARA