NFTとは

ブロックチェーンの技術を活用して、複製が簡単なデジタルデータに唯一無二の価値を付け新たな市場を作り出しつつあるNFT。最近ではデジタルアートやSNSの投稿文に数億円の値が付く事例もあります。本コラムは世間で話題になっているNFTがなぜ注目されているのか、その仕組みや利用方法などを解説します。

NFTとは

NFTとはNon-Fungible Token(非代替性トークン)の略称で、暗号資産(仮想通貨)と同じく、改竄が困難なブロックチェーンの技術を活用して、発行・運用されています。

NFTはデジタル上で扱われるデータが「原本」なのかを証明できる鑑定書や証明書の役割を持っており、デジタルデータにも現実のアート作品などと同じ希少価値が担保されるので、資産的な価値を持たせることができます。NFTを活用して固有の価値を証明できるこの特性は、すでに会員権や不動産などの所有権を取引するなどの事例やデジタルアートなどの芸術品の証明に活用されつつあります。

2021年9月時点のNFT市場の合計時価総額は141億9000万ドル、日本円で約1兆5885億円(DappRadar推計)にのぼり、世界中の個人やスタートアップ、団体がNFTを発行しており、NFTゲーム業界を中心に市場が拡大しています。

従来のトークンにはない技術的特色を持つNFTが、基盤となるブロックチェーンの利用シーンを広げる可能性やあらゆる分野のデジタル化、簡略化を進めていくと期待され、大きな注目を集めています。

NFTが必要とされる理由と注目される背景

NFTが必要とされる大きな理由に「デジタル上の複製による弊害」が挙げられます。現実で売買されるモノとは違い、電子版の資料や作品などのデータはコピーがしやすく、原本と複製の区別が困難なうえ、悪用されるリスクが高いことがデジタルの弱みでした。

そんな中、近年の暗号資産業界の成長と同時にその基盤技術であるブロックチェーンの応用事例にも注目が集まり始めます。このブロックチェーンの技術がデジタルデータを唯一無二のモノとして証明する手段にすれば、無形のデジタル作品と紐づけて、資産としての価値を担保できるという可能性からNFTの概念が生まれました。
また、元々NFTは2017年から2018年にかけて一部界隈で話題になっていましたが、昨今の暗号資産業界の再燃を受けて注目を浴びるようになります。

さらに、NFTが注目される背景として、NFTに関連するビックニュースも関係しています。例えば、2021年3月にTwitter創業者のジャック・ドーシー氏の出品したNFTであるTwitter上での彼の初投稿が約3億円で落札され、世界的に大きな話題を呼びました。
また、同年3月にアート業界を揺るがした出来事の一つに、世界有数のオークション「クリスティーズ」にデジタルアート作家のビープル氏のアート作品「毎日:最初の5000日」が出品されました。その落札額は記録的な6930万ドル(約75億円)となりました。
相次ぐデジタル作品の高額取引のニュースもNFTが注目される一つの要因といえます。

NFTと暗号資産の違い

ビットコインをはじめとする暗号資産はFungible Token(代替性トークン)であり、そのトークンの存在は同じモノとして扱われるため、代替や分割が可能です。法定通貨や電子マネー、株式など数量が同じであれば、価値や価格が同じになるものも代替性トークンのカテゴリーに含まれます。

一方で、NFTはその名の通り、非代替性であるため一つとして同じトークンは存在せず、それ以上分割できないトークンです。地域ごとに価格相場が異なる不動産や土地、一つとして同じものがないアート作品などそれ自体に独自の性格や価値をもつものがこれに当てはまります。作品や商品の識別情報も含めて資産価値を与えて、他の同等作品と交換できない唯一無二のモノとして扱うことができます。
実際にNFTの主な活用領域としてゲームアイテムやデジタルアートなどの一点ものに事例が多いのもNFTの特性と相性が良いのが理由の一つです。

NFTによる収益の仕組みと期待される分野

実際にNFTを発行できるマーケットはいくつか存在しますが、基本的な流れはオリジナルコンテンツを作成したアーティスト自身が、その商品詳細を専用のプラットフォーム上に記録し、NFTとしてアップロードするのが主な方法です。

さらにNFTにはそのデジタル作品の購入者が、別の人物と売買可能な市場が存在します。
通常、クリエイターや商品を開発販売するメーカーに収益や売り上げが入るのは販売時のみで、中古販売などの2次流通ではその利益が還元されることはありませんでした。しかし、このNFTのプラットフォームで転売時に取引される一定の売買額はロイヤリティとして元の作者であるクリエイターやメーカーにも還元される仕組みが成り立ちます。

また、基盤となるブロックチェーンの高いトレーサビリティ(追跡可能性)と改竄が困難な特性を生かすことで、アーティスト作品の著作権保護やコンテンツのIP(知的財産)への活用、デジタル作品の資産追跡や真贋証明などの2次流通を促進させる呼び水になりえます。
先述したデジタルアートの事例のほかにも、音楽の著作権保護や仮想現実(VR)によるデジタル上での土地購入などの事例もあり、今後多様な業界へNFTの波が広がっていくと期待されています。

健全な発展はできるのかNFTへの懸念と注意点

多くの注目と期待が膨らむ一方で、NFTの仕組み上の課題や規制を問題視する声もあります。

一つに投機、転売目的のNFT購入者も多く、その背景に暗号市産業界の上昇に合わせたバブル傾向を指摘する声があります。取引される作品自体の価値づけはクリエイターと当事者間の自由意志ではあるものの、適正価格とは言えない価格で1次流通がなされています。またNFT自体は性質的に代替性がないため、保有しているだけでは価格の変動がなく実際に利益が出るタイミングは2次流通時になります。現在はコンプライアンスの基準がまだ整備されていないマーケットで価格上昇を見込んだ取引がされており、売買ブームの加熱によって取引額が青天井になっているのが現状です。

またNFTは複製のリスクもあります。NFTを証明する所有書や鑑定証は偽造できなくてもデータそのものはコピーが可能なうえ、すでにネット上のデジタルアートを無断複製してNFTを発行された事例も存在します。こういった悪用や違反行為に対してはNFT発行元の業者や業界を支援する企業が一定の審査基準を設けるなどNFTの2次流通に関する規制整備が急務です。

私たちCTIAもNFTを応用した新規事業の提案やブロックチェーンの技術を元にしたDX推進を進めています。フィンテックをはじめ、NFT・ブロックチェーンが継続的な利用価値を持てるよう実社会の課題やニーズに合う解決案を提案していきます。

Writer: Ogasahara

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