デジタルトランスフォーメーション最前線、スマート農業

新技術が農業に与える革新的な変化とは

 

 

農業に忍び寄る衰退の影


東京都の人口約1300万人に3か月分のお米を供給できる土地が野放し状態であることをご存知でしょうか?これは農業が抱える問題の一部分です。

昨今のコロナウイルスや暖冬の影響で、世界経済や様々な産業界が大きな打撃を受けています。その業界の中でも農業は季節による環境変化や菌や害虫の影響を受けやすい産業であり、衣食住に欠かせない原料生産の源です。

しかし、現在国内では就農人口が減少傾向にあり、耕作放棄地が年々増加しています。また、リスク管理体制の穴から商品の産地偽装やすり替えが行われています。このような多岐にわたる農業の課題がデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)でどのように解決されるのでしょうか?

 

農業の今と将来のポテンシャル


日本のバブル景気が始まった1985年(昭和60年)の国内就農人口は543万人に及んでいました。そこから2度の改元を経て2019年では就農人口は約168万人、全盛期から7割が減ったことになります。

また、就農者の高齢化も問題の一つです。現在平均年齢は66.8歳を推移しており、農作業の重労働化と数年後の大量リタイアも考えると切迫した状況です。(下図参照)

 

高齢化、人手不足によって手薄になったリスク管理体制を突いた問題も起こっています。農林業界では農作物の産地偽装がその一つです。末端の販売店や飲食店で偽る場合や流通経路内ですり替えられることもあります。
冒頭で紹介した耕作放棄地の増加は筆者自身も衝撃を感じました。現在、日本国内の耕作放棄地は富山県の面積(約4200㎢)に匹敵します。

仮にこのすべての耕作地でお米を生産した場合、誤差はありますが四半期の間1300万人に難なく供給するお米が生産できる計算になります。食料自給率の低い日本にとってこれらの問題は早急に解決されるべきです。こういった農業のウィークポイントを打開しようと試みられているのが、「スマート農業」です。

 

農業を救うDX、スマート農業


スマート農業とはロボット技術・情報通信技術(ICT)を活用して、省力化・精密化や高品質生産の実現などを推進している新たな農業です。担い手不足、若者の地方離れが深刻な農業の現場に対して、スマート農業は魅力ある技術の導入と就農環境の向上を進めることができ、新規就農者の呼び込みと栽培技術などのレガシーを継承できると期待されています。

例えば、耕作放棄地に人ではなく、ロボットトラクターやドローンなどのRPA*を導入すれば、高齢者の労働負担を減らすことができ働き方改革につながります。TBS系で放送されたドラマ「下町ロケット」でもスマート農業、無人農業トラクターが題材にされていたことも記憶に新しいです。

また、農作物の産地偽造やすり替えに、ブロックチェーン*が有効なソリューションとして期待されています。高いトレーサビリティ(情報追跡性)と対改ざん性能の特徴を持つブロックチェーンを応用し、農作物を生産してから販売するまでの商流過程を一元管理できれば、産地の偽造防止につながります。

CTIAでは2019年11月に京都・亀岡市で行われた「京都スマート農業祭2019」に出展し、自社開発した生産管理システム「Traceability as a Service」について特設ステージでのプレゼンテーションを行いました。

このようなスマート農業やDX推進が取り入れられることで、営農環境の向上と産業のさらなる活性化が見込まれます。

*RPA(Robotic Process Automation )
ロボットによる業務自動化。認知技術を取り入れたロボットを利用して人間が行う業務を自動化または効率化を図る取り組みを指します。

*ブロックチェーン
「ブロック」と呼ばれるデータの単位を生成し、鎖(チェーン)のように連結していくことによりデータを保管するデータベース。ビットコインをはじめとする暗号資産(仮想通貨)の中核技術でもあり、現在様々な分野で応用、実証試験が行われています。

 

2020年は就農者の利便性を向上させるために、ドローン普及やICT強化などのデジタル化が広まる「DX元年」ともいえる年です。このDXの追い風を受けてCTIAのTaaSシステムも農業をはじめ、様々な産業を活性化する種になり、大きな実りを得られる助けになるよう取り組みます。

Writer : T. OGASAHARA

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