ブロックチェーン技術による『カーボン・オフセット』
あらゆる事業に革新をもたらす4つの理由

世界のCO2削減に拍車をかけるデジタルトランスフォーメーションのチカラ

『カーボン・オフセット』とは

近年、大手企業の間では「カーボン・オフセット」という取り組みが一つの共通言語になりつつあります。この制度を実行に移すべく日本の大手商社をはじめ物流、小売業など環境省が主導する「J-クレジット制度」への参加をいち早く進めています。この制度に取り組むためには面倒な申請手続きや複雑な認証手順などが課題となっています。それらをブロックチェーン技術によって解決しようとする試みも動き出しています。

そこで、今回はこの「カーボン・オフセット」や「J-クレジット制度」が、なぜ注目を浴びているのか、様々な課題を解決する可能性を秘めたブロックチェーン技術についてご紹介します。

CO2削減量に“ 信用 ”を与える、『カーボン・オフセット』

カーボンオフセットを一言で説明すると、『日常生活や経済活動において避けることができないCO2等の温室効果ガスの排出について、まずできるだけ排出量が減るよう削減努力を行い、どうしても排出される温室効果ガスについて、排出量に見合った温室効果ガスの削減活動に投資すること等により、排出される温室効果ガスを埋め合わせるという考え方』(環境省公式HPより引用)です。

つまり、目に見えないCO2などの削減量にクレジット(信用)を与える制度が「カーボンオフセット」になります。図解を交えて詳しく見ていきます。

『カーボン・オフセット』の仕組みとは

カーボンオフセットの仕組み

例えば、A社が所有する3つの工場と100台のトラックの排気ガスを削減するには先ず排出量を把握し、その排出量をもとに削減努力を行う必要があります。しかし、その作業においては一企業だけでは賄えず、限界があります。

このどうしても削減できない一部または全部の排出量をクレジットによって他で埋め合わせることが『カーボン・オフセット』になります。その方法はB自治体の植林活動を支援するでも良いですし、C社の省エネ設備、D社の再生可能エネルギーを導入し、資金支援することでも成立します。これによって、A社はこのカーボンオフセットの取り組みを活用したおかげで3つの工場と100台のトラック分のCO2削減量を達成したことになります。

このようにカーボンオフセットは、簡単には測れないCO2排出などの削減量を目に見えるカタチで信用に換えて、それを他企業と一丸となって埋め合わせる制度を言います。

この考え方は世界の機関投資家の中で重視されているESG投資*や国際連合が提唱するSDGsの一環としても注目されている取り組みです。

*ESG投資
投資の意思決定において、従来型の財務情報だけを重視するだけでなく、非財務情報のESGも考慮に入れる投資手法の一つです。ESGは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字で企業の長期的な成長のためにこのESGが示す3つの観点が必要だという考え方が世界的に広まっています。

押さえておくべき『カーボンオフセット』の背景

カーボンオフセットの歴史を遡ると、1997年に英国のフューチャーフォレストという植林NGOの団体の取り組みから始まったとされ、その後欧米を中心に広まりました。特に2006年にはイギリスで年間約500万トンにおよぶCO2がカーボンオフセットを目的にクレジット取引されています。

日本も1997年に京都議定書が採択されており、この流れを受け環境省が2008年に発表した「我が国におけるカーボン・オフセットのあり方について(指針)」を基にカーボン・オフセットフォーラム(J-COF)を設立し、その後国内の制度と統合され現在の「J-クレジット制度」に至ります。

日本環境省が主導する「J-クレジット制度」について >>  J-クレジット制度公式ホームページ

現在では欧米で数十社がカーボンオフセットを提供し、ここ数年で市場が急成長しています。日本でも、環境省の2020年2月時点の推計では2018年度までに削減された国内CO2認証量が約470万トンに達したと発表されました。(下図参照)

カーボンオフセットの背景

『カーボンオフセット』の今後の課題

 画期的な取り組みとして世界で注目されているカーボンオフセットですが、いくつか課題もあります。日本のJ-クレジット制度を例にとって以下の通りにまとめてみました。

  • クレジット発行の下限値が高く、取引できる企業が限定されてしまう
  • 調査報告から発行までの手続き期間が長く煩雑(最短発行で約2年かかる)
  • プロジェクトの真正性の証明が困難、など

上記の課題は現制度の中の氷山の一角になりますが、今後、中小企業やスタートアップなどが参入しようにも、取引するクレジット額が大きすぎることが壁になり、さらに手続きに最低2年間かかるのはあまりに長く非効率という点でも課題となっています。

例えば、買い物の会計に使えるのは1万円札のみで、会計が済むまでに2日間かかるお店が提供するサービスを利用したいと思うでしょうか?少なからず、私は行きたくありません。このようなことがJ-クレジット制度の現状です。こうした問題を解決するためにもブロックチェーンの技術が多大なる可能性を秘めています。

ブロックチェーン技術が解決のカギに!

ブロックチェーン技術を活用すれば透明性が高く、安全なデータを不特定多数のノード(端末)から追跡することができます。またネット環境さえあれば、誰でも参加できる時系列のデータベースを構築できます。
ではなぜ、これがカーボンオフセットで有効なのでしょうか?

  • なぜ、カーボンオフセットにブロックチェーン?

(1)整合性がある
ブロックチェーンでは基準になる記録は一つなので、データベースによって記録内容が違うということが起こりません。これにより「デジタルなのに唯一無二」が担保され、CO2などの削減量やクレジットを信頼性の高い状態で移転・記録ができます。

(2)効率化
従来の紙ベースのやり取りを削減できるだけでなく、クレジット発行時の独自計算式をデータベース上で自動計算することで取引手続きの効率化と柔軟化が期待できます。

(3)データの利活用
コンソーシア内で履歴が公開されているので、参加している各企業、ノードごとにデータの利活用が可能です。

(4)相互運用性(インターオペラビリティ)
各企業や自治体、官公庁などが新しくノードを立ち上げてクレジットを発行・取引しても高いインターオペラビリティを発揮します。

カーボンオフセットにブロックチェーンが有効な理由
  • なぜ、このタイミングなのか?

ブロックチェーンへの資金流入のきっかけは、2017年に企業がトークン(デジタル権利証)を発行して資金調達する「イニシャル・コイン・オファリング(ICO)」が話題になったことでした。その後、仮想通貨の熱は冷めましたが、ブロックチェーン技術に関わる企業への出資は現在も増えています。

そのブロックチェーン技術に白羽の矢を立てたのが環境省のJ-クレジット制度です。2020年3月、環境省はJ-クレジットの認証・取引にブロックチェーン技術を活用してデジタル運用することを発表しました。早ければ2022年度の開始を目標にしています。

J-クレジット認証・取引をブロックチェーンで。デジタル運用、22年度にも開始


持続可能な地球環境を重視する現代のニーズとブロックチェーンというデジタル技術の必要性がうまく交わった事例の一つといえます。

さらに、CTIAでは2020年2月に非財務情報を適正に記録する新たなシステム設計に向けた取り組みを開始しました。この取り組みは上記で紹介したカーボンオフセット、J-クレジットだけでなくESG投資、SDGsなど幅広い活動に対しても優位性のあるシステム構築を目指しています。

「CTIA、非財務情報を適正に記録する新たなシステム設計に向けた取り組みを開始」
https://taas.life/ctia-started-designing-a-new-system-which-could-properly-record-non-financial-information/


このようにエネルギー産業をはじめ様々な業界でブロックチェーン活用が緩やかに進展することが期待できます。

今は亡き実業家ヘンリー・フォードは「未来を考えない者に未来はない。」と語りました。
地球環境の未来を考え、未来に必要な技術でより良い世界をつくることが未来を生きる人の条件ではないでしょうか。

CTIAはブロックチェーン技術を活用して、より良い未来をつくれるようにDX推進に取り組みます。

Writer:T.OGASAHARA